大阪大学 産業科学研究所 複合知能メディア研究分野

リハビリ効果の定量化のための歩行及び座位動作映像解析に関する研究

本研究では、自主リハビリ支援システムへの応用等を目指した、リハビリ効果の定量化技術の確立を目的としています。具体的には、理学療法士によるリハビリ施術中に患者の歩行及び座位動作を撮影した映像,及び,理学療法士が教示したリハビリ効果に関するスコアの組からなる収集済みの既存データを利用し,映像から抽出される歩容及び座位動作特徴からリハビリ効果に関するスコアを推定する手法の研究を行います。

研究の背景

病院でのリハビリにおいて、従来、理学療法士による歩行テスト等の観察や、その結果に基づく治療が行われています。しかし、現在の診療制度では、リハビリ治療を受けられる時間が限られており、その時間以外での効果的な自主リハビリが困難であること、また、理学療法士の熟練度による判断のばらつきが存在すること等が問題となっています。そのため、歩行及び座位動作のテスト等におけるリハビリ効果を画像認識技術により定量的に評価し、自主リハビリの支援や理学療法士間での評価のばらつきの低減が求められています。

研究の医学的・社会的意義

従来、理学療法士の経験に基づく主観評価によってなされていたリハビリ効果の評価を、映像解析という客観的な評価手法によって定量化することは、熟練の理学療法士の「経験知」を可視化することにも相当します。また、従来の限られたグレーディング指標(例えば、FIM:機能的自立度評価表)では表現しきれない、より詳細な指標が提供可能となります。これにより、より細やかなリハビリ治療に貢献し得ることから、本研究の医学的意義は大きいと言えます。 リハビリ効果の定量化が実現すると、全ての患者が一定以上の熟練度を持つ理学療法士と同等レベルのリハビリ診断を受けられるようになることから、理学療法士の経験によるばらつきを抑えることができるようになり、ひいては,リハビリ診療時間外の自由診療による自主リハビリを自動的に支援するシステムへと繋がっていくことから、社会的意義が大きいと言えます。

データの管理

本研究では,歩行及び座位動作の映像解析技術(画像処理・画像認識など)の開発を行うことから,被験者の顔画像を含めた全身の原画像(顔ぼかしなどの処理を行っていない,撮影したままの画像)を用いて研究を進める必要があります.これは,顔ぼかし処理による画像特徴抽出における悪影響や,本システムの実利用場面(実利用時には,人手による顔ぼかしを入れることなく,撮影した画像をそのまま入力してリハビリ効果のスコアを推定する)との齟齬が生じることを考慮してのことです. そのため,顔ぼかし前の原画像を扱う際には,以下の個人情報保護策,及びセキュリティ対策を取ります. 尚,本研究成果を,学術雑誌や学会などで発表することがありますが,その際に画像データを掲載する場合には,顔ぼかし処理を施します.

従前の研究課題との関係

本研究は,以前に実施しておりました研究課題「歩行映像解析による患者の居場所把握とリハビリ効果定量化に関する研究」(大阪大学 承認番号:R人20-3)の発展的な研究となります.以前の研究においても、本研究と同様に、患者の歩行及び座位動作を撮影した映像を解析して、リハビリ効果に関するスコアを推定する手法の開発を目的の一つとしており、本研究においては、同目的における映像解析技術の改良やリハビリ効果に関するスコア推定の機械学習モデルの改良などに取り組むことで、リハビリ効果の定量か技術を更に発展させることを目的としています.

不同意の場合(オプトアウト)の連絡先

本研究におけるデータの利用に同意されない方は,以下の連絡先宛にお申し出下さい.申し出を頂き次第,速やかにデータを削除し,利用を停止致します.尚,研究論文等で発表された後は一部撤回が不可能なこともございますので,ご了承下さい.

研究代表者:大阪大学 高等共創研究院 教授 槇原 靖