医用画像処理
- 医用画像の視認性向上と診断支援に関する研究 -


特記事項    

本研究は,独立行政法人科学技術振興機構が推進する平成15年度大学発ベンチャー創出事業 において,『全方位ビジョンを用いた医療技術の開発』として課題採択されました.    

  カプセル内視鏡映像における適応的表示速度制御方式
カプセル内視鏡で撮影された8時間映像を,病巣を見落とさずに注視し続けるのは医師にとって負担である.現状では,画像描画速度を手動で変更し,早送り・スロー再生によって診断するため,熟練者でも45分以上,初心者では2時間程度の診断時間を要している.そこで,ビデオ表示速度を画像処理によって適応制御し,煩雑な手作業を軽減することで短時間の診断が可能となる支援ツールを実現する.本研究では,連続する画像の特徴量である隣接画像間類似度と移動量から,映像取得時におけるカプセルおよび小腸の状態を分類し,状態によって描画速度を決定する.その状態判定と速度決定には多くのパラメータを含むため,複数の医師の評価から最適なパラメータを決定する.結論として,8時間映像を適応制御による30分程度の表示でも診断可能になり,平均再生速度15倍速を達成した.


  • 特許     
    1. 特願2005-82735: 画像処理装置            
    2. PCT/JP2005/023272: カプセル内視鏡画像表示制御装置          

  • 発表
    1. Vu Hai, 越後富夫,佐川立昌,八木敬子,斯波將次,樋口和秀,荒川哲男,八木康史, "カプセル内視鏡の映像診断支援",信学技法,MI,pp. 5-8, 1月, 2006.



  消 化器官展開画像生成
消化器官内視鏡映像による検査では,移動するカメラから撮影した画像列を獲得するが, 病変の確認には,画像列を繋ぎ合わせた静止画として描画する方が容易である.本研究では, 超広角レンズまたは全方位ミラーから獲得したカメラ側方の環状画像列から,投影面を 一般化円筒の制約以外に既定しないビデオモザイキングを行う.環状画像を展開した画像は 隣接フレーム間の移動が多項式近似可能で,変形した展開画像を多数フレームで貼り合せる ことから,腸管展開画像を生成する.


  • 特許     
    1. 特願2004-041209: 内視鏡および内視鏡システム            
    2. PCT/JP2005/002416: 内視鏡システム          

  • 発表
    1. Suchit PONGNUMKUL, Ryusuke SAGAWA, Tomio ECHIGO, and Yasushi YAGI, "Deformable Registration for Generating Dissection Image of a Tube from Annular Image Sequence," 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2005), pp.335-340, 7月, 2005.



  内 視鏡カメラの歪み補正

消化器官内視鏡は,カメラの周囲映像を捉えるために広角レンズが用いられている. 本研究では,広角レンズによるレンズ歪み補正を,平面ディスプレイ上に表示した グレイコードパターンを利用することで,ディスプレイ座標系とカメラ画像座標系 の対応関係となる変換マップ作成によって実現する.本手法は,従来手法 と異なりレンズ歪みモデルを用いず,ディスプレイと画像の密な対応関係から,画像周辺部でも適応可能であり,単純な線形補間によって元画像から 歪み補正画像への変換マップが作成可能となる利点がある. また提案手法は,変換マップを直接作成して歪みを補正するので,画像中心・アスペクト比・ 光軸からの傾き角のカメラ内部パラメータを必要としないのが特徴である. (詳細)


  • 発表
    1. 高辻誠也, 佐川立昌, 越後富夫, 八木康史, "グレイコードパターンを利用したレンズ歪みの補正手法", 画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2005), pp.174-180, 7月, 2005.
    2. Ryusuke Sagawa, Masaya Takatsuji, Tomio Echigo, and Yasushi Yagi, "Calibration of Lens Distortion by Structured-Light Scanning," In Proc. 2005 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp.1349-1354, August, 2005.