ID:AM-0-1026

Keywords:

乳牛, 跛行スコア推定, 3次元画像解析, データベース構築

Abstract:

昨今酪農業界において、戸数あたりの乳牛の増加に伴い酪農従事者の乳牛管理の負担が増加している。 乳牛の管理が行き届かずに乳牛が病気にかかることは、生乳の品質および生産効率の悪化につながる。そのような背景からICTを用いた乳牛の健康管理の省力化・低コスト化の必要性が高まっている。 乳牛の病気は外見的特徴に現れるものが多数あり、かつ低コスト化を意識すると、映像解析による管理が有望である。 蹄の傷や壊死を伴う蹄病は、最も重要かつ重大な疾病の一つであり、獣医師などが目視で蹄病を診断する際、背中の形状と歩き方の観察により蹄の健康度を表す跛行スコアを付与する。 本研究では、深度センサから得られる乳牛の3次元映像を解析することにより、跛行スコアを推定する。 本報告では、跛行スコア推定のためのデータベース構築について述べるとともに、跛行スコア推定のための特徴量を提案する。 従来、目視で跛行スコアを付与する際に用いられる背中の形状を乳牛の3次元形状から抽出し、獣医師による目視観察により付与された実際のスコアと比較することにより、本研究で提案する特徴量の有効性を検証する。

Bibtex entry:

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\setcounter{巻数}{53}
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\受付{2011}{11}{4}
%\再受付{2011}{7}{16}   %省略可能
%\再再受付{2011}{7}{20} %省略可能
\採録{2011}{12}{1}

\begin{document}
\title{乳牛の蹄病検出のための3次元歩行画像解析}

\affiliate{OU}{大阪大学\\
Osaka University, Suita, Osaka 565--0871, Japan}

%\affiliate{NICT}{国立研究開発法人 情報通信機構\\
%Nationl Institute of Information and Communications Technology, Osaka 530--0001, Japan}

\author{砂川 翔哉}{Sunagawa Shoya}{OU}
\author{大倉 史生}{Okura Fumio}{OU}
\author{槇原 靖}{Makihara Yasushi}{OU}
\author{村松 大吾}{Muramatsu Daigo}{OU}
\author{八木 康史}{Yagi Yasushi}{OU}


%%%■冒頭箇所の変更、文章量の削減(他の人のを見て確認)、背骨検出の方法を書き換え、画像の調整、結果の書き換えの順で作業
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\begin{abstract}
昨今酪農業界において、戸数あたりの乳牛の増加に伴い酪農従事者の乳牛管理の負担が増加している。
乳牛の管理が行き届かずに乳牛が病気にかかることは、生乳の品質および生産効率の悪化につながる。そのような背景からICTを用いた乳牛の健康管理の省力化・低コスト化の必要性が高まっている。
乳牛の病気は外見的特徴に現れるものが多数あり、かつ低コスト化を意識すると、映像解析による管理が有望である。
蹄の傷や壊死を伴う蹄病は、最も重要かつ重大な疾病の一つであり、獣医師などが目視で蹄病を診断する際、背中の形状と歩き方の観察により蹄の健康度を表す跛行スコアを付与する。
本研究では、深度センサから得られる乳牛の3次元映像を解析することにより、跛行スコアを推定する。
本報告では、跛行スコア推定のためのデータベース構築について述べるとともに、跛行スコア推定のための特徴量を提案する。
従来、目視で跛行スコアを付与する際に用いられる背中の形状を乳牛の3次元形状から抽出し、獣医師による目視観察により付与された実際のスコアと比較することにより、本研究で提案する特徴量の有効性を検証する。
\end{abstract}

\begin{jkeyword}
乳牛、跛行スコア推定、3次元画像解析、データベース構築
\end{jkeyword}

\maketitle
\section{はじめに}
\label{section:1}
酪農業において、乳牛の日々の健康管理を適切に行うことが極めて重要である。
しかし近年、酪農従事者の高齢化~\cite{elder}と一酪農家あたりの乳牛飼育数の増加~\cite{norin,dairy_farmer}により、酪農家にかかる負担が増加している。
酪農家は掃除、給餌、搾乳等の作業に追われ、日々の健康管理のために乳牛を観察する機会が減少している。
日々の健康管理を怠ると乳牛の病気の発見が遅れ、生乳の品質や生産効率が悪化することにより、経済的損失を被る。

特に蹄の健康維持は、乳牛の健康管理において重要である。
蹄に異常が生じると、乳牛は痛みにより歩行を嫌がる。これにより、蹄に血液が循環せず、状態はさらに悪化し、乳牛の運動量が減少する。
その結果、蹄のみならず全身の様々な病気やトラブルの原因となる\cite{heart}。
最悪の場合、起立もままならないため、食糧摂取が困難になり産乳量も減少し、死に至ることもある\cite{Hooves}。

獣医師や酪農家はいくつかの指標を目視や触診によって、乳牛の健康状態を計測している。
躯体と体脂肪のバランスを見ることで肥満または痩せすぎの状態を知ることができるボディーコンディションスコア(以降、BCSと呼ぶ)、
ルーメン(第一胃)窩と呼ばれる牛の左側のへこみ度合で餌を適切に食べているかを知ることができるルーメンフィルスコア(以降、RFSと呼ぶ)、
蹄病に罹患しているかを歩き方や立ち姿から調べる跛行スコアがその一例である~\cite{cow}。
RFSは数時間単位、BCSと跛行スコアは数週間単位で変化すると言われている。

本研究では、健康状態管理のためのスコアのうち、蹄の健康維持に直接関連する跛行スコアについて取り扱う。
乳牛の蹄に異常がある場合、背中の曲がり具合と歩様に変化が見られる。
跛行スコアは、これらの特徴変化によりスコア1からスコア5の5段階に振り分けられる。
跛行スコアが低いほど乳牛の蹄は健康で、跛行スコアが高いほど蹄の状態が好ましくないことを示す。
図\ref{fig:score1}に跛行スコア1の乳牛、図\ref{fig:score3}に跛行スコア3の乳牛を示す。
跛行スコアが高くなると、背中が曲がることが知られている。背中の曲がり方とともに、歩幅が小さくなったり脚を庇ったりする様子を観察し、詳細なスコアを決定する\cite{Hooves}。

健康状態管理のためのスコアリングは酪農家の目視による観察で行われており、獣医師が定期的に診断することもある。
しかし、前述のように酪農家は日々別の仕事に追われているため観察回数が少なく、病気を見落とす可能性がある。
獣医師が日常的に診断することは、コストと獣医師の数を考えると非現実的である。
そのため情報技術を用いた日常的な診断は、乳牛管理の省力化および高品質な乳牛生産を実現するために必要である。
跛行スコア推定に関して、乳牛の産乳量と食料摂取量、体重の変化を日々観察することで病気の兆候を発見する研究~\cite{MR_SI1,MR_SI2}、
4つの独立した体重計を用いることで脚をかばっている兆候を発見する研究\cite{4WP1,4WP2}、
3軸加速度センサを用いて起立時や歩行時のバランスを測定することで蹄病を発見する研究\cite{ACC1,ACC2,ACC3,ACC4}などが行われている。
しかし、これらの手法は、特殊な体重計や加速度センサを牛舎や牛体に取り付ける必要がある。

\begin{figure}[t]
\begin{center}
\subfigure[跛行スコア1の乳牛]{
 \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section3/score1.png}
 \label{fig:score1}
}
\subfigure[跛行スコア3の乳牛]{
 \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section3/score3.png}
 \label{fig:score3}
}
\caption{跛行スコアによる背中の曲がり具合の違い\cite{cow}}
\label{fig:score1and3}
\end{center}
\end{figure}

近年安価かつ牛体への取り付けが必要なく、牛舎への設置が容易なカメラや深度センサを用いた健康状態の推定が注目されている。
画像処理に基づく跛行スコアの推定手法として、牛体の真横から撮影された映像から背中の曲がり具合\cite{CAM3,CAM5}や歩幅や着地タイミング~\cite{CAM1,CAM2,CAM4}を観察することで跛行スコアを推定する研究が行われている。
%ビデオカメラで撮影した映像から乳牛の歩幅の特徴を観察することで跛行スコアを推定する研究\cite{CAM1}、
%地面に脚を着くタイミングと、地面から脚を離すタイミングで推定\cite{CAM2}
%歩く道を使って推定\cite{CAM4}
また、深度センサを用いた3次元画像処理による手法として、背中の形状を求め、頭の下がり具合も考慮した独自の指標により、跛行スコアを推定する研究が行われている\cite{3DCAM1,3DCAM2}。
しかし、3次元画像処理による従来手法では、跛行スコア推定に用いる特徴量を計算するために用いる三次元座標群を全て手作業で入力する必要があり、自動化には程遠い。また、三次元画像処理における重要な問題である三次元形状の計測誤差に対処する手法は提案されていない。

本研究では、深度センサにより撮影された深度画像を入力として、3次元形状計測の誤差を考慮して背形状を抽出する。また、抽出された背形状に基づく特徴量と、獣医師により手作業で付与された跛行スコアの回帰分析に基づきスコアを推定する。
本報告では、跛行スコア推定のためのデータベース構築及び背形状に基づく特徴量を提案し、構築されたデータベースを用いた実験により跛行スコア推定手法の有効性を検証する。


%一例として, 蹄病に罹患した蹄がある場合, 蹄に体重をかけないように庇うため健康な蹄
%へ体重をかけ, 起立姿勢や歩様などに影響が出る [6]ということを利用し, 跛行スコアととも に牛に3軸加速度センサを取り付けることで
%蹄病であるかどうかの診断を行う方法 [7]も示 されているが, すべての牛に装着型のセンサの取り付けるには金銭・時間の両面でコストが かかる.


%今回は特徴が使えるかどうかという視点。

%関連研究
%本論文、立ち位置


%もし、この背線の特徴または歩き方の特徴をカメラを使って検出できれば、牛の蹄の状態を自動で判定することができることと思われます。
%こういった背景を踏まえて、RGB-Dカメラで撮影した映像を解析することでロコモーションスコアを計測し蹄の健康状態を管理しようというのが私の研究です。カメラであることによって牛に近寄ることがないので牛へのストレスを減らすこともできます。
%今、ロコモーションスコアの推定に関して2つの方法を検討していて、背線の方に関しては一段落着いたので、現在は
%歩様の特徴について調べています。今回はこちらについて説明していきます。




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\section{スコア付き乳牛データベースの構築}
\label{section:2}
酪農学園大学の協力の下、牛舎内に撮影機器を取り付けて乳牛を撮影し、その映像を加工してデータベースを作成した。
本研究で構築したスコア付きデータベースは、本報告で提案する背形状に基づく跛行スコア推定のみならず、他の特徴量を用いた跛行スコア推定や、健康状態に関する他スコアの推定に活用できる。

\begin{table}[b]
  \begin{center}
    \caption{Kinectの諸元}
    \begin{tabular}{|c|c|c|} \hline
    撮影データ& 画像サイズ[ピクセル] & フレームレート\\ \hline \hline
      RGB & $512\times424$ &30 fps \\ \hline
      深度 & $1920\times1080$ &30 fps \\ \hline
    \end{tabular}
    \label{tab:Kinect}
  \end{center}
\end{table}

\subsection{データベースの構成}
本研究では、以下の情報を持つデータベースを構築する。
図\ref{fig:database}にデータベースに登録された乳牛の例を示す。
\begin{enumerate}
\setlength{\parskip}{0cm} % 段落間
\setlength{\itemsep}{0cm} % 項目間
\item カラー画像・深度画像
\item 乳牛の歩行1周期分の3次元点群データ
\item 乳牛の個体識別番号
\item 撮影日時
\item BCS(左右)
\item RFS
\item 跛行スコア
\end{enumerate}

\begin{figure}[t]
 \begin{center}
  \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section2/db.eps}
 \end{center}
 \caption{データベース例}
 \label{fig:database}
\end{figure}


\begin{figure}[tp]
 \begin{minipage}{0.50\hsize}
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.9\columnwidth]{figure/section2/mitorizu.png}
  \end{center}
  \caption{牛舎の見取り図}
  \label{fig:mitorizu}
 \end{minipage}
 \begin{minipage}{0.45\hsize}
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.9\columnwidth]{figure/section2/kinect.jpg}
  \end{center}
  \caption{Kinectの設置位置}
  \label{fig:Kinect}
 \end{minipage}
\end{figure}

\noindent {\bf カラー画像・深度画像} 乳牛の撮影は酪農学園大学の協力の下、
牛舎内にKinect for Windows v2(以降、Kinectと呼ぶ)を取り付けて行った。
本研究では、カラー画像と深度画像を撮影している。
Kinectの仕様を表\
ef{tab:Kinect}に示す。
牛舎内で、乳牛は図\ref{fig:mitorizu}に示す矢印方向に移動する。
Kinectは図\ref{fig:Kinect}のように取り付けられている。この位置に設置することで、乳牛の歩行を1周期程度撮影するとともに、
乳牛の体の左側面に存在するルーメンを撮影することで、今後RFS推定のためのデータとしても扱うことができる。
以上の環境で撮影されたカラー・深度画像
(図\ref{fig:color}、図\ref{fig:depth}参照)をデータベースに登録する。
ただし、Kinectが家庭用ゲーム機用のカメラであることから、出力のカラー画像・深度画像共に左右反転している。

\noindent {\bf 乳牛の歩行1周期分の3次元点群データ} 歩行1周期分の3次元点群データは、Kinectで撮影された
深度画像(図\ref{fig:depth}参照)から得られる。
図\ref{fig:depth}では、画像中の真っ黒な画素が測定不能点で、黒に近いほど近景、白に近いほど遠景の点となっている。
この深度データから点群データを生成し、Kinectの画角内に進入してきた歩行中の乳牛の点群のみを取り出してから、
Iterative Closest Point (ICP)アルゴリズム\cite{ICP}により位置合わせすることによって、乳牛が歩行しているシーンの3次元点群データを得る。
本研究では、この点群データから撮影中に立ち止まらず、1周期以上連続して歩行する乳牛を手動で選択した。
本研究でKinectを設置した牛舎では乳牛が16頭飼育されている。ここから、
個体毎に異なる日・時間に撮影されたものを含む歩行1周期の点群データから、
延べ42頭分のデータベースを構築した。歩行中の乳牛の点群の一例を図\ref{fig:gait}に示す。

\begin{figure}[t]
  \begin{center}
\subfigure[乳牛のカラー画像]{
   \includegraphics[height=25mm]{figure/section2/color.jpg}
  \label{fig:color}
}
\subfigure[乳牛の深度画像]{
   \includegraphics[height=25mm]{figure/section2/depth.png}
  \label{fig:depth}
}
  \caption{Kinectによる撮影画像例}
  \label{fig:kinactdata}
  \end{center}
\end{figure}

\begin{figure}[t]
\begin{center}
 \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section4/walk.eps}
\caption{乳牛の歩行の様子を撮影した3次元点群}
\label{fig:gait}
\end{center}
\end{figure}

\noindent {\bf 乳牛の個体識別番号と撮影日時} 乳牛は図\ref{fig:mitorizu}のカメラの撮影範囲に進入する前に必ず搾乳ロボットを通過する。
搾乳ロボットでは、搾乳作業を行った乳牛の個体識別番号と日時を自動で記録する。
搾乳ロボットで取得した乳牛の個体識別番号と日時は撮影データと対応しており、それぞれをデータベースに登録する。

\noindent {\bf BCS(左右)、RFS、跛行スコア} 各スコアは酪農学園大学にて獣医師が定期的に診断することによって得られたデータで、
搾乳ロボットの日時データと紐付けられる形で管理されている。
これらのスコアをそれぞれデータベースに登録する。
本研究で推定する跛行スコアについて詳述する。
跛行スコアは\ref{section:1}章でも述べたように5段階で評価され、
スコア1の乳牛は蹄の状態が最も健康で、スコアが大きくなるにつれて蹄の状態も悪化する。
本研究に用いるデータベースには、2015年9月28日と2015年10月12日に付けられたスコアを使っており、
表\
ef{tab:score_bunpu}のような分布となっている。
\begin{table}[b]
  \begin{center}
    \caption{乳牛の跛行スコア分布}
    \begin{tabular}{|c|c|c|} \hline
    跛行スコア& 乳牛の頭数\\ \hline \hline
       1 & 30 \\ \hline
       2 & 11 \\ \hline
       3 & 0  \\ \hline
       4 & 1  \\ \hline
       5 & 0  \\ \hline
    \end{tabular}
    \label{tab:score_bunpu}
  \end{center}
\end{table}
また、乳牛の歩行1周期分の3次元点群データに対するスコアは、
スコアの付けられた前後一日間でスコアが変化しないことを仮定して付与している。
これは\ref{section:1}章で述べたように跛行スコアが数日単位ではなく数週間単位で変化する指標であるためである。


%それぞれのスコアの詳細(付け方)、各スコアの及ぶ日数単位を初めにで話すか
%前後一日では変わらないだろうという前提、と歩行1周期のデータに対する補足
%どんなスコアがつけられているかを記述
%撮影したのがどんなもの(デプスとカラー撮影してることをどっかで記述)



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%====================================================================================================================================================================================
\section{乳牛の背形状を用いた跛行スコア推定}
\label{section:3}
%====================================================================================================================================================================================
\subsection{概要}
本研究では、乳牛の跛行スコアの推定のために、静止画像から抽出された背形状を用いる。
図\ref{fig:3Dpoints}は背形状の特徴を求める際に使用する点群の例であり、登録した乳牛の歩行1周期分の3次元点群データから全身が映っている1フレームを選択したものである。
本研究のように、Kinectを用いて真上または斜め上から深度画像を撮影する際、撮影環境(カメラ画角など)の問題により乳牛の歩行が十分な時間撮影できないことがある。
本章で提案する背形状を用いた手法では、そのような場合でも、背中が映っている1フレームを取り出すことでスコア推定が可能である。


\begin{figure}[t!]
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.7\columnwidth]{figure/section3/3Dpoints.jpg}
  \end{center}
  \caption{乳牛の点群データ}
  \label{fig:3Dpoints}
\end{figure}

\begin{figure}[t!]
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.7\columnwidth]{figure/section3/3Dpoints_start_end.jpg}
  \end{center}
  \caption{背線の始点・終点の設定}
  \label{fig:3Dpoints_start_end}
\end{figure}

\begin{figure}[t!]
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.7\columnwidth]{figure/section3/backshape.jpg}
  \end{center}
  \caption{抽出された背線の例(青線)}
  \label{fig:back_shape}
\end{figure}

%\begin{figure}[t!]
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.7\columnwidth]{figure/section3/axis.jpg}
%  \end{center}
%  \caption{軸の設定}
%  \label{fig:axis}
%\end{figure}

%\begin{figure}[t!]
% \begin{minipage}{0.47\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.95\columnwidth]{figure/section3/3Dpoints.jpg}
%  \end{center}
%  \caption{乳牛の点群データ}
%  \label{fig:3Dpoints}
% \end{minipage}
% \begin{minipage}{0.47\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.95\columnwidth]{figure/section3/3Dpoints_start_end.jpg}
%  \end{center}
%  \caption{背線の始点・終点の設定}
%  \label{fig:3Dpoints_start_end}
% \end{minipage}
%\end{figure}
%\begin{figure}[t!]
% \begin{minipage}{0.47\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.95\columnwidth]{figure/section3/backshape.jpg}
%  \end{center}
%  \caption{抽出された背線の例\\(青線に示す)}
%  \label{fig:back_shape}
% \end{minipage}
%  \begin{minipage}{0.47\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.95\columnwidth]{figure/section3/axis.jpg}
%  \end{center}
%  \caption{軸の設定}
%  \label{fig:axis}
% \end{minipage}
%\end{figure}


提案手法では、あらかじめ設定された背線の始点・終点(図\ref{fig:3Dpoints_start_end}参照)を入力として、図\ref{fig:back_shape}のような背線を自動抽出し、特徴量を計算する。
%====================================================================================================================================================================================
%\subsection{特徴抽出}
%2次フィッティングを用いて算出した面積特徴を抽出するまでの流れ。
乳牛は、蹄の状態が悪くなるにつれ図\ref{fig:score1}から図\ref{fig:score3}のように背中が曲がることが知られている\cite{Hooves,cow}。%乳牛の3次元点群を横から観察することで、背中の曲がり具合を確認できる。
本研究では、背中の曲がり具合を、躯体を真横から見た時の背線と直線が作る面積として表すことによって背形状の特徴量${\cal F}_{bck}$とする。
%特徴量${\cal F}_{bck}$は、背中が曲がっているほど大きくなる。
以下では具体的な${\cal F}_{bck}$の求め方を述べる。なお、座標系は図\ref{fig:3Dpoints}に示すように右手系をとるものとし、データベース構築時(\ref{section:2}章参照)においてあらかじめ位置合わせがなされているものとする。

\begin{figure}[t] 
  \begin{center}
   \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section3/backpoint.eps}
  \end{center}
  \caption{背骨点の推定}
  \label{fig:slice}
\end{figure}

\subsection{背線の抽出}
事前に設定した背線の始点と終点までの区間において、微小区間ごとに背線を構成する三次元座標(背骨点)を推定し、背骨点を近似する曲線を背線の形状とする。
本研究では、後脚・前脚の付け根位置を目安に、背線の始点・終点位置を設定した。

背骨点の推定のため、$x$軸方向への微小区間内に含まれる点群スライス(図\ref{fig:slice}(b)参照)を抽出する。
三次元点群には、深度画像の計測誤差が含まれるため、誤差軽減のために$z$軸に沿って一定間隔毎に、3次元点群の座標を平均した代表点を求める。
その代表点の中で$y$軸方向に最大の点を背線を形成する背骨点$(x_i,y_i,z_i)$とする。
以上の操作を、始点から終点まで$x$軸方向に微小にずらしながら行い、図\ref{fig:gaikei}のように乳牛の背骨点の集合を得る。
これ以降、後脚の位置の$y$軸方向の最高点を始点、前脚の位置の$y$軸方向の最高点を終点と呼ぶ。

抽出された背骨点の集合には、3次元計測誤差および乳牛の背骨配置に由来する凹凸が存在する。
一方、乳牛の跛行傾向の観察には、一般に乳牛の背線形状がなす滑らかなカーブ(もしくは直線)が用いられる。
そのため、本研究では前段落で検出された点群を用いて、次の式(\ref{eq:polyfit_2})で表される2次近似曲線$p(x)$を求める。

\begin{equation}
 p(x)=p_{n-1}x^2+p_nx+p_{n+1}
 \label{eq:polyfit_2}
\end{equation}
得られた2次近似曲線$p(x)$を青色、始点と終点とを結ぶ直線を赤色したものを図\ref{fig:polyfit}に示す。


\begin{figure}[t]
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.7\columnwidth]{figure/section3/gaikei.png}
  \end{center}
  \caption{抽出された背骨点の集合}
  \label{fig:gaikei}
\end{figure}

\begin{figure}[t]
  \begin{center}
   \includegraphics[width=0.7\columnwidth]{figure/section3/polyfit.png}
  \end{center}
  \caption{2次近似曲線(青色)および始点と終点を結ぶ直線(赤色)}
  \label{fig:polyfit}
\end{figure}

%
%\begin{figure}[t]
% \begin{minipage}{0.48\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.98\columnwidth]{figure/section3/gaikei.png}
%  \end{center}
%  \caption{抽出された背骨点の集合}
%  \label{fig:gaikei}
% \end{minipage}
% \begin{minipage}{0.48\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.98\columnwidth]{figure/section3/polyfit.png}
%  \end{center}
%  \caption{2次近似曲線と、始点と終点を結ぶ直線}
%  \label{fig:polyfit}
% \end{minipage}
%\end{figure}
%次に、この式(\ref{eq:polyfit_2})で表される2次近似曲線と始点と終点とを$z$軸を考慮せずに結んだ直線との間に形成された面積を求める。
%面積は区分求積法のような形で求められる。

\begin{figure}[t]
 \begin{center}
  \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section3/back_shape_area.png}
 \end{center}
 \caption{特徴量${\cal F}_{bck}$の算出}
 \label{fig:back_shape_area}
\end{figure}%図の差し替え

\subsection{特徴量の算出}
本研究では、式(\ref{eq:polyfit_2})で表される2次近似曲線$p(x)$と、背線の始点と終点を結んだ直線$l(x)$が作る面積をスコア推定のための特徴量${\cal F}_{bck}$とする。
${\cal F}_{bck}$は図\ref{fig:back_shape_area}で示すように区分求積法により求められる。
微小区間の幅を$\delta$、直線$l(x)$から$i$番目$(1\leq i\leq n)$の点$(x_i, p(x_i))$までの高さを$h_i$とすると、面積は式(\ref{eq:area})で表される。
\begin{equation}
 \delta\sum_{i=1}^{n-1} h_i
 \label{eq:area}
\end{equation}
式(\ref{eq:area})は乳牛の大きさを考慮していないため、得られる値は大きな乳牛ほど大きくなり、小さな乳牛ほど小さくなる。
よって、始点から終点までの距離$w$を用いて正規化した面積を特徴量${\cal F}_{bck}$とする。
\begin{equation}
 {\cal F}_{bck}=\frac{\delta\sum_{i=1}^{n-1} h_i}{w^2}
 \label{eq:normalized_area}
\end{equation}




%曲線と直線によって形成された面積を求める
%具体的には始点とフィッティングした曲線上の次の座標の2点からの始点と終点を結んだ直線までの距離を求め、
%面積を求める際はz軸方向を考えないことにも言及すること
%既に述べた条件より後脚の位置と前脚の位置がわかっているので、この区間において
%牛を輪切りにするような形でx軸方向に適当なスライスを作成する。


%図の変更、図の差し替えが最低でも2件、軸に関しては口頭での説明でなく、図にすべて入れる形にするのか?
%
%%====================================================================================================================================================================================
%%====================================================================================================================================================================================
%%====================================================================================================================================================================================
%\section{乳牛の歩様を用いた跛行スコア推定}
%\label{section:4}
%%ロコモーションスコアの歩様に関する特徴を記述
%
%%====================================================================================================================================================================================
%\subsection{概要}
%%歩様にも特徴が現れることを簡単に記述
%跛行スコアは蹄の状態を表す指標であるため、
%歩行中の脚の動きを直接観察することで、
%どの脚が悪いのかがわかると考えられる。また、
%初期段階での蹄病の発見に有効であるとともに、
%背形状を用いたものと比較し詳細なスコアリングが可能である\cite{Hooves}。
%本章では乳牛の歩様特徴を用いた跛行スコアの推定手法を提案する。
%
%図\ref{fig:gait}は歩様特徴を求める際に使用する、データベース中のある乳牛の歩行1周期分の点群の例である。
%図\ref{fig:gait}は、乳牛の歩行位置の関係で脚の大部分が撮影できているが、
%実際には
%図\ref{fig:noleg}のように、
%乳牛の歩行位置によっては、
%脚部を常に撮影することは困難である。
%\begin{figure}[t]
% \begin{center}
%  \includegraphics[width=0.6\columnwidth]{figure/section4/noleg.jpg}
% \end{center}
% \caption{脚が映っていない乳牛}
% \label{fig:noleg}
%\end{figure}
%よって、脚部が直接観測できない状況下で、歩行中の脚の動きを解析する必要がある。
%そこでまず、
%脚部が観測できない状況において歩行解析を行う際に有効な部位について考察し、
%具体的な特徴量について述べる。
%
%
%
%
%%====================================================================================================================================================================================
%\subsection{歩行解析に有効な部位}
%前節で述べたように、データベース中に記録されている乳牛の脚は、
%全フレームにわたって映っているわけではない。
%そのため、他の部位に注目することで、歩行中の脚の動きを解析する。
%以降、後脚に注目して議論する。
%乳牛の体つきや骨格などを考慮して、
%最も特徴が現れると予想される箇所は、
%脚の垂直上方向にある
%図\ref{fig:position}に示す腰部である。
%\begin{figure}[t]
% \begin{minipage}{0.5\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section4/position.jpg}
%  \end{center}
%  \caption{腰部}
%  \label{fig:position}
% \end{minipage}
% \begin{minipage}{0.4\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.86\columnwidth]{figure/section4/variation.png}
%  \end{center}
%  \caption{腰部の高さの変化図}
%  \label{fig:variation}
% \end{minipage}
%\end{figure}
%図\ref{fig:position}の腰部の上下変化を時系列順に並べたものを
%図\ref{fig:variation}に示す。
%腰部の下にある脚が地面を蹴り前に動くにつれ$y$の値は大きくなり、
%地面に接地するタイミングで$y$の値は最大値をとり、
%それ以降、反対の脚が動いているときは減少していくという傾向が多くの乳牛で見られた。
%従って、
%腰部における歩行中の上下動は、
%脚の動きに応じて変化していると言える。
%以上のことは、歩行の特徴がその箇所に表れていると言えるため、
%その部分の動き特徴は、歩行解析に有効であると考えられる。
%
%本研究では、乳牛の歩き方の特徴として腰部の時間変化を用いる。
%腰部を含む位置を
%図\ref{fig:camPosi}のように手動で設定し、
%その位置を含む微小区間を時系列順につなぎ合わせた点群
%(図\ref{fig:9410_points}参照)を腰部の時間変化とする。
%%跛行スコアの良い乳牛と跛行スコアの悪い乳牛との間でこの歩様特徴にどのような違いがあるのかを調べたいので、
%%今回はこの箇所の検出はプログラムでは行わず手動での設定を行った。
%%また、その箇所の変動はある程度の範囲を持つものと考え、
%%その箇所を含むように乳牛を輪切りににしたスライスをデータベースの歩行から取り出し、
%%それらのスライスを時系列順につなぎ合わせた点群、つまり
%%図\ref{fig:9410_points}
%%のような点群から特徴を抽出するものとする。
%\begin{figure}[t!]
%\begin{center}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.50\columnwidth]{figure/section4/camPosi.png}
% \label{fig:camPosi}
%}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section4/9410_points.png}
% \label{fig:9410_points}
%}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.40\columnwidth]{figure/section4/9410_slice.png}
% \label{fig:9410_slice}
%}
%\caption{(a)は歩行中の乳牛を表しており、カメラ位置から撮影された腰部を歩行1周期分時系列順につなぎ合わせた点群が(b)である。点が赤くなるほど高い位置にあることを示す。(c)は(b)にある赤い直線で示される微小区間内の点群である。}
%\label{fig:sample_time_points}
%\end{center}
%\end{figure}
%
%
%
%
%%====================================================================================================================================================================================
%\subsection{特徴抽出}
%%フーリエ変換を用いて算出した歩様特徴を抽出するまでの流れ。
%%こちらで足が悪いとかくっと、いいと滑らかになるのではないかという仮説を立て、フーリエ変換
%跛行スコアが高く、蹄に問題を抱える個体の歩行には、人間と同じように脚を引きずる動作が見られる。
%この特徴的な動作によって、跛行スコアの高い乳牛と低い乳牛とで、
%歩行中の腰部で次のような違いが生じると考えられる。
%\begin{itemize}
%\item[(a)]高さ変化の滑らかさ%smooth
%\item[(b)]高さ変化の変動の大きさ%large
%\end{itemize}
%(a)は蹄の状態が悪い乳牛が脚を引きずる動作を行う際、負傷した脚を庇い、もう一方の脚を早く前に出すことで、
%健康な乳牛よりも滑らかでない動きが現れると予想されるためである。
%(b)は蹄の状態が悪い場合、負傷した脚を庇い、通常よりも冗長な動作が含まれると予想されるためである。
%以上の2つの特徴を踏まえて、数値化し取り出すためにフーリエ変換を行う。
%以下では、腰部の具体的な特徴の求め方について述べる。
%
%入力には図\ref{fig:9410_points}にあるような3次元点群を用いる。
%3次元点群には3次元点が観測されておらず、欠損が生じている部分が存在するため、
%まず線形補間を行う。
%その結果を
%図\ref{fig:interp}に示す。
%\begin{figure}[t]
% \begin{center}
%  \includegraphics[width=0.5\columnwidth]{figure/section4/9410_bias_off.png}
% \end{center}
% \caption{3次元点群の線形補間結果}
% \label{fig:interp}
%\end{figure}
%ただし、これ以降の画像で高さや大きさの違いを表すような図において、
%色調は画像内の相対的なもので表現しており、絶対的な指標での表現はしていない。
%従って、
%ある画像内での画素値の差における変化の大きさは、
%別の画像内での画素値の差における変化の大きさと等しいとは限らない。
%
%また、フーリエ変換を行う際に始点と終点の値の違いは、
%高周波成分として計算結果に表れる可能性があるため、
%そのずれを補正する。
%まず、図\ref{fig:ichiawase}に示すように、
%画像の左端の始点と画像の右端の終点とを結んだ直線の方程式$l(x)$、
%その始点と終点の高さの平均$m$を求める。
%そして各点で$l(x)$と$m$との差を引く、という処理を画像の各行で行った。
%\begin{figure}[t]
% \begin{center}
%  \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section4/ichiawase.png}
% \end{center}
% \caption{始点と終点の高さ調整の概要}
% \label{fig:ichiawase}
%\end{figure}
%補正後の3次元点群を
%図\ref{fig:interp2}に示す。
%\begin{figure}[t]
% \begin{minipage}{0.45\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.9\columnwidth]{figure/section4/9410_bias_on.png}
%  \end{center}
%  \caption{3次元点群の高さ補正後}
%  \label{fig:interp2}
% \end{minipage}
% \begin{minipage}{0.45\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=0.5\columnwidth]{figure/section4/9410_1Df.png}
%  \end{center}
%  \caption{フーリエ変換結果}
%  \label{fig:1Df}
% \end{minipage}
%\end{figure}
%
%そして、点群の時間軸方向に対してそれぞれフーリエ変換を行う。
%その結果、
%図\ref{fig:1Df}のようになり、
%左の列から1倍、2倍、…、と周波数が並んでいる。
%ここで得られたフーリエ変換の結果を用いて特徴量を求める。ただし、
%体の側面にあたる部分と反対の脚側、すなわち
%図\ref{fig:interp2}中の上下部分は計測できていない箇所を含んでいるため、
%中心の点から下方向に1/4の部分、すなわち
%図\ref{fig:9410_pos}に示す赤い枠内の部分についてのフーリエ変換結果のみを使用する。
%また、
%高周波成分として現れる計測ノイズの影響を排除するため、
%特徴としては基本周波数から10倍周波数まで、すなわち
%図\ref{fig:9410_1Dpos}で示す赤い枠内のみを使用する。
%従って、
%最終的には
%図\ref{fig:9410_final}に示す赤い枠内の部分のみを用いた。
%\begin{figure}[t]
%\begin{center}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.44\columnwidth]{figure/section4/9410_pos.png}
% \label{fig:9410_pos}
%}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.22\columnwidth]{figure/section4/9410_1Dpos.png}
% \label{fig:9410_1Dpos}
%}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.22\columnwidth]{figure/section4/9410_final.png}
% \label{fig:9410_final}
%}
%\caption{フーリエ変換の結果と特徴計算に使用する箇所}
%\label{fig:fourier_final}
%\end{center}
%\end{figure}
%
%$i$倍周波数を$f_i$とすると、特徴${\cal F}_{freq}$を式(\ref{eq:smooth})で表す。
%\begin{equation}
% {\cal F}_{freq}=\frac{\sum_{i=1}^{i=10} \overline{f_i}}{\overline{f_1}}
% \label{eq:smooth}
%\end{equation}
%${\cal F}_{freq}$は1列目に存在する基本周波数成分の平均に対する
%各列に存在する各周波数成分の平均の合計で、基本周波数成分は跛行スコアが高いと滑らかではなくなるという仮定から小さくなり、
%周波数成分の合計は跛行スコアが高いと大きな動作を行うという仮定から大きくなる、と考えられる。
%よって、${\cal F}_{freq}$が大きいほどスコアも大きくなると予想される。
%
%





%====================================================================================================================================================================================
%====================================================================================================================================================================================
%====================================================================================================================================================================================
\section{スコア推定実験}
\label{section:5}

%====================================================================================================================================================================================
本研究で提案する特徴量および特徴抽出手法の有効性を評価するため、獣医師等により付与された跛行スコアとの線形回帰を行い、スコア推定を行った。

%====================================================================================================================================================================================
\subsection{線形回帰と交差検定によるスコア推定精度評価}
\label{section:5-2}
データベース中の全42頭分の歩行1周期分の3次元点群データから乳牛の全身形状が撮影されたフレームを抽出し、\ref{section:3}章で提案した背形状の特徴を算出し、データベース中の跛行スコアとの線形回帰を求めた。
図\ref{fig:F}に線形回帰の結果を示す。

\begin{figure}[t]
 \begin{center}
  \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section5/score.eps}
 \end{center}
 \caption{背形状特徴${\cal F}_{bck}$と跛行スコアの線形回帰}
 \label{fig:F}
\end{figure}
%図\ref{fig:S}に歩様特徴${\cal F}_{freq}$の線形回帰結果を示す。
%\begin{figure}[t]
% \begin{center}
%  \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section5/S.eps}
% \end{center}
% \caption{滑らかさを考慮した特徴による線形回帰}
% \label{fig:S}
%\end{figure}

%\subsection{交差検定によるスコア推定精度の評価}
\label{section:5-3}
さらに、42頭のデータベースを用いた一個抜き交差検定により、各特徴で実際の跛行スコアとの誤差平均とスコア一致率を求めた。
スコア一致率は結果を四捨五入して求めたスコアと実際の跛行スコアとがどれほど一致しているかを表す。
なお、跛行スコアがスコア1からスコア5までの5段階の指標であることを考慮して、推定結果が1以下になった場合は1に、5以上になった場合は5とした。

背形状特徴${\cal F}_{bck}$を用いた推定値の絶対平均誤差(Mean Absolute Error: MAE)は、0.317となった。また、スコア一致率は88.1\%となった。
評価に用いるデータベースが異なるため単純な比較はできないが、深度センサを用いた跛行スコア推定の既存研究\cite{3DCAM1}におけるスコア一致率60.2\%と比較し高い数値となった。

%====================================================================================================================================================================================
\subsection{考察}
\label{section:5-4}

\noindent {\bf 提案特徴量${\cal F}_{bck}$についての考察} 
図\ref{fig:F}の背形状の特徴量${\cal F}_{bck}$の線形回帰結果を考察する。
図\ref{fig:F_points}(a)は、${\cal F}_{bck}$が小さな値をとった図\ref{fig:F}中の個体(a)の背形状を示す。
同様に、図\ref{fig:F}(b)〜(d)には、図\ref{fig:F_points}(b)〜(d)がそれぞれ対応する。

ここでは特に、跛行スコアが1でありながら、スコア2に属する個体(d)の${\cal F}_{bck}$よりも大きな値をとる図\ref{fig:F}中の(b)、(c)について詳述する。
個体(b)がスコア1でありながら、${\cal F}_{bck}$の値が大きくなった理由として、歩行中の背線形状の変化が挙げられる。
個体(b)歩行中の動画像の異なるフレームについて、図\ref{fig:F_points}(b)と比較し直線的な背線が観察された。
個体(c)がスコア1でありながら${\cal F}_{bck}$の値が大きくなる理由として、計測誤差が挙げられる。
提案手法は、3次元計測誤差による影響を軽減する背線抽出を実現している。しかし、提案手法は距離計測結果のバイアス誤差(真の形状と比較し常に手前または奥の点として観測される誤差)に対応する処理は含まれない。このような誤差は、深度センサにより放射される赤外光の反射率が低い黒色の体表面上において顕著に観察された。

背形状の特徴抽出に関しては、選択するフレームや大きな計測ノイズの影響が存在しているため、それらの影響をさらに軽減するための対策が必要である。

\begin{figure}[t]
\begin{center}
\subfigure[]{
 \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section5/1.png}
 \label{fig:F_1_1}
}
\subfigure[]{
 \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section5/2.png}
 \label{fig:F_1_3}
}
\subfigure[]{
 \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section5/3.png}
 \label{fig:F_1_2}
}
\subfigure[]{
 \includegraphics[width=0.47\columnwidth]{figure/section5/4.png}
 \label{fig:F_2_1}
}
\caption{背形状の例(図(a)〜(d)は、図\ref{fig:F}の個体(a)〜(d)に対応)}
\label{fig:F_points}
\end{center}
\vspace{-2mm}
\end{figure}

%
%\noindent {\bf 歩様特徴量${\cal F}_{freq}$についての考察} 次に図\ref{fig:S}の歩様による特徴${\cal F}_{freq}$の線形回帰結果を考察する。
%スコア2の点よりも
%大きな値をとるスコア1について述べる。
%図\ref{fig:bad}(見方については図\ref{fig:sample_time_points}、\ref{fig:fourier_final}参照)は
%大きな値をとったスコア1の乳牛の一例を表しており、
%図\ref{fig:good}は${\cal F}_{freq}$の値が小さな例である。
%スコア1でありながら、${\cal F}_{freq}$の値が異なる理由として、
%高さ変化の変動の大きさが挙げられる。%${\cal F}_{freq}$式(\ref{eq:smooth})で表され
%図\ref{fig:bad}、図\ref{fig:good}には共通して、
%図\ref{fig:remarkable}に示すような
%画像中央付近を横方向に貫く白い線が存在する。
%これは背骨の時間的推移を表している。
%背骨の点群は高い位置に存在し、
%背骨の点群が歪んで特徴計算に使用する箇所に含まれることによって、
%脚の上下運動により生じる変動よりも高さの変動が大きくなる。
%図\ref{fig:good}では、特徴計算に使用する箇所に背骨の特徴をあまり含んでいないため、
%${\cal F}_{freq}$が小さくなり、
%図\ref{fig:bad}では、特徴計算に使用する箇所に背骨の特徴が多く存在し、かつ、波打っているため、
%${\cal F}_{freq}$が大きくなったと考えられる。%分子って正規化の意味あい?
%\begin{figure}[t]
% \begin{minipage}{0.31\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section5/S_1_1.png}
%  \end{center}
%  \caption{失敗例}
%  \label{fig:bad}
% \end{minipage}
% \begin{minipage}{0.31\hsize}
%  \begin{center}
%   \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section5/S_1_4.png}
%  \end{center}
%  \caption{成功例}
%  \label{fig:good}
% \end{minipage}
%  \begin{minipage}{0.31\hsize}
%  \begin{center}
%  \includegraphics[width=1.0\columnwidth]{figure/section5/remarkable.png}
% \end{center}
% \caption{背骨の形状推移}
% \label{fig:remarkable}
% \end{minipage}
%\end{figure}
%
%歩様の特徴を用いた場合のスコア推定精度が悪くなった理由ついては、
%乳牛の歩様の特徴が表れる箇所を的確に選択できなかった問題、
%定量化する際の歩様の特徴の定め方の問題が考えられる。
%前者については、特徴計算に使用する箇所に背骨の特徴が含まれるか否かにより、
%結果に大きく左右していたことからもわかる。
%剛体を仮定したICPアルゴリズム\cite{ICP}を用いて位置合わせを行ったことにより、
%図\ref{fig:mortion}のように体を曲げながら歩行する乳牛の背骨部分の位置合わせに失敗し、
%特徴計算時に含まれたことが、精度低下の要因であると考えられる。
%非剛体を扱うことができる位置合わせアルゴリズム\cite{TPS}を用いることで、歩様に関する特徴量の結果は更なる改善が見込まれる。
%\begin{figure}[t!]
%\begin{center}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.4\columnwidth]{figure/section5/before.png}
% \label{fig:before}
%}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.4\columnwidth]{figure/section5/after.png}
% \label{fig:after}
%}
%\subfigure[]{
% \includegraphics[width=0.5\columnwidth]{figure/section5/remarkable_point.png}
% \label{fig:remarkable_point}
%}
%\caption{縦線:画像の中央線、横線:腰部を含む微小区間、丸印:背骨の位置。図(a)、(b)と図(c)とで対応。背骨の位置が図(a)と(b)とでずれていることが確認できる。}
%\label{fig:mortion}
%\end{center}
%\end{figure}

\noindent {\bf スコア推定についての考察} 
本研究で提案した背形状の特徴による推定の精度は、用いたデータベースが異なるため単純比較はできないが、既存研究~\cite{3DCAM1,3DCAM2}と比較し高かった。
既存手法は、手作業で入力された背骨上および頭部の特徴点群を利用する。本研究のように頭部を常に観測することが難しい場合、従来研究で用いられた特徴量をそのまま利用し比較することはできない。
しかし、既存手法と比較し、始点と終点を設定するのみで背線の自動抽出・特徴量計算を行う提案手法の有用性は高いと考えられる。

特徴点間の長さや角度情報のみを用いた既存研究と比較し、本研究では面積情報という、特定の特徴点位置における3次元計測誤差に頑健な特徴量を選択したことが、本研究における推定結果が既存研究よりも精度が高い理由として挙げられる。
一方で、データベースの規模の大きさ、スコアのばらつき具合は既存研究と大きく異なる。本研究で全42頭からなるデータベースを用いたのに対して、既存研究で用いたデータベースには何百頭もの乳牛が登録されている。
さらに信頼性の高い結果を得るためにはデータベースの大規模化が必要である。




%====================================================================================================================================================================================
%\subsection{概要}
%本章では、\ref{section:3}章で求めた背形状の特徴と\ref{section:4}章で求めた歩様の特徴を、
%実際の跛行スコアを用いて線形回帰を行う。
%それぞれの考察を行った後に、
%各特徴で推定を行いその精度について述べ最後にそれぞれの特徴の比較を行う。
%また本研究では、
%乳牛の跛行スコアを推定するために、
%\ref{section:2}章で述べたデータベース中の16頭分の乳牛の歩行データと跛行スコアを用いて、
%線形回帰を行った。
%推定するにあたっては一個抜き交差検定により以下の手順を踏む。
%\begin{enumerate}
%\setlength{\parskip}{0cm} % 段落間
%\setlength{\itemsep}{0cm} % 項目間
%\item 全16頭のから1頭を取り出す。
%\item 残りの15頭で線形回帰を行う。
%\item 線形回帰結果で残りの1頭でスコア推定を行い、実際の跛行スコアとの誤差と、結果を四捨五入して求めたスコアを記録する。
%\end{enumerate}
%以上の操作を16回繰り返し、各特徴で誤差平均と推定正答率を求める。
%誤差平均を求める際は、跛行スコアがスコア1からスコア5までの5段階の指標であることを考慮して、
%推定結果が1以下になった場合は1に、5以上になった場合は5にする。





%====================================================================================================================================================================================
%====================================================================================================================================================================================
%====================================================================================================================================================================================
\section{おわりに}
\label{section:6}
本研究では、獣医師らによって付与された跛行スコアと歩行1周期分の乳牛の3次元点群データを対応付けたデータベースを作成した。
構築されたデータベースに基づき跛行スコアを推定するため、背形状の抽出手法および背形状を用いた特徴量を提案した。
また、本研究で提案したスコア推定手法を用いて、一個抜き交差検定によるスコア推定精度の評価を行った。

実験の結果、本研究で提案した背形状特徴による推定精度は88.1\%となり、既存研究を上回った。
しかし、依然として改善の余地が見られる。3次元計測ノイズが大きい場合、特徴量に大きな影響を及ぼす。また、選択するフレームに関してもフレーム間の関係を考慮する必要がある。
今回使用したデータベースは42頭で構成されており、既存研究と比較し小規模である。そのため、推定結果の信頼性が低く、乳牛データベースを大規模化する必要がある。


跛行スコアは蹄の状態を表す指標であるため、背形状以外に歩行中の脚の動きを直接観察することも評価観点の一つとされる。
従来、目視による跛行スコアの付与においても、背形状のみを用いることと比較し、歩行動作を解析することにより詳細なスコアリングが可能であると言われている\cite{Hooves}。
また、歩行動作の解析は、疾病が発生した脚の判別の他、初期段階での蹄病の発見に有効である。
歩様解析による跛行スコアの推定手法を検討する必要があり、またBCSやRFSなどの他スコアの推定が今後の課題である。 

\section*{謝辞}
\addcontentsline{toc}{section}{謝辞}
牛の歩行映像の撮影にあたりご協力頂きました酪農学園大学中田健教授に感謝致します。本研究はJSPS科学研究費補助金 研究活動スタート支援 15H06362の助成を受けたものです。

\bibliographystyle{junsrt}
\bibliography{myref},

}